鶴江鶴 冬カフェなふたり 現パロ

現パロ鶴江鶴

スタbに立ち寄るふたり。時事ネタ!

季節はもう十二月。

江渡貝は隣を歩く鶴見を横目で見る。二人の歩く斜め前には街中でよく見かけるコーヒーチェーン店の看板が見える。

江渡貝は店先に出ている看板を一瞥し、もう一度鶴見の方を見た。

「あの、鶴見さん」

江渡貝はもじもじ指先をこねながら言葉話を続けた。

「今日時間ありますか……コーヒー屋さんに寄りたいです」

「コーヒー屋さん?」

鶴見が聞き返せば江渡貝はうんうんと首を縦に振る。江渡貝は店先に並ぶ黒い看板を指さした。

「今日からクリスマスの新作が飲めるんです。去年は飲もうと思っていたら売り切れになってしまって」

だめですか? と江渡貝は恥ずかしそうに聞いた。下を向いた自信なさげな眉が可愛らしい。

「うん、いこうか」

そう答えれば、すぐに江渡貝は笑顔をぱっと咲かせた。鶴見は新作のイラストが描かれた看板を見る。

コーヒーカップの上にふわりと乗ったクリームのフラペチーノがクリスマスの新作のようだ。

「新作はどんな味なんだろう」

「えっと、ピスタチオフレーバーのホットミルクとフラペチーノです。もう一種類はホワイトチョコ!」

「ふぅん」

ピスタチオにするか、ホワイトチョコにするか、迷いながら店の入り口に立ち止まれば、ふわりと甘い香りがした。

「どっちにするか迷っちゃいます」

「ううむ」

迷うなぁと言いながらも江渡貝はずんずん迷いない足取りでレジへと向かった。

「ピスタチオのホット、エムサイズで!」

鶴見も江渡貝と同じ物を注文する。

会計を済ませ、すでにカウンターでドリンクを待つ江渡貝のとなりに鶴見も並ぶ。

「迷っているなんて言っていたが、ここに来る前から頼むものは決めていたんじゃないかね」

「バレちゃいました……だって去年飲み逃しちゃったんですもん」

「そんなに人気があるのか。楽しみだな。そういえば、あこそにあるドリンクボトル可愛いねぇ」

「シロクマのやつですか? あ、鶴模様もありますね!」

きゃっきゃっと女子高生よろしく談笑する二人に「お待たせしましたー」と店員が声をかけた。

ドリンクを受け取るや江渡貝はかわいい、と声を上げる。確かにいつもの白地に緑色のロゴだけのシンプルなデザインではなく、赤や緑に、雪の結晶やトナカイのデザインが描かれている。

カウンターから離れた窓際はちょうど二人分の席が空いていた。カップを二つ並べ、椅子に座り窓の外を眺める。

かぽっと白い蓋を外せば、抹茶のような薄緑色のクリームに赤いソースがかかっておりクリスマスツリーのようだ。

隣から聞こえる電子音に目をやれば江渡貝は飲み物の写真を撮っていた。

「今年初、ですから!」

そう言って江渡貝はカップに唇を近付ける。尖らせた唇ですすっと飲み物を吸っている。

口ひげがクリーム塗れになりそうだ、と思いながら鶴見もカップに口を近づけた。

「甘い」

赤いソースはストロベリーソースだったらしい。ソースの甘酸っぱさに続き、濃厚なピスタチオ風味のミルクが口の中に広がった。次いで、冷えたホイップが舌先に触れた。贅沢な温度差のコントラストを楽しみながら顔を上げる。

やはり窓ガラスに映ったヒゲにはクリームが付いてしまっていた。ハンカチを取り出そうとする鶴見の前に、江渡貝はハンカチを差し出した。

ありがとう、と受け取ろうとすれば江渡貝は鶴見の口元にハンカチを当てる。

「クリーム付いちゃっていますよ」

ふわりとホイップクリームのように江渡貝は言う。

「うん」

暖かいものを飲んだからだろうか、額から変な汗が出る。

「次はホワイトチョコのを飲むんで、また付き合ってくださいよ」

江渡貝は悪戯っ子のような顔でそう言った。

ーーー

「今日も……だめ、ですか?」

江渡貝はちょいちょいと鶴見のコートの裾を引いて尋ねた。

江渡貝が立ち止まった場所は昨日も立ち寄ったコーヒー店の前だった。

「ホワイトチョコレート……」

ぼそ、と江渡貝はそれだけ呟いた。江渡貝の視線の先には、昨日飲んだピスタチオ風味のホットドリンク、そしてホワイトチョコレート風味のドリンクが描かれた看板だった。

正式名称はここの店らしく随分と長い。ホワイトチョコレートクリスマスホリデーとか何とか。

すでにSNSで話題となっているらしい。女子大生や仕事帰りのサラリーマンが並んでいる。

ホワイトチョコレートのドリンクなんてこの時期はたいして珍しいものではない。しかし甘党であり、江渡貝党である鶴見にはこの誘いを断る理由がない。

「うん、行こうか」

気を付けていたが連日の甘々な飲み物に太りそうだなぁ。そんなことを考えながらも鶴見はレジで早速ホワイトチョコのドリンクを頼んでいた。

ドリンクカウンターでは江渡貝は目をキラキラさせて店員の作るものを眺めている。

「そういえば席は空いているかな」

鶴見は店の中を見渡した。すると昨日と同じ、窓際の席が二つ並んで空いていた。

「じゃあ、鶴見さんは席座っていてください。先に予約のフダを立てときゃ良かったんですけど」

まとめて持ってきますね、と言う江渡貝に飲み物は任せて鶴見は席に向かった。

「お待たせしましたぁ」

ふわりと甘い香りがした。

振り向けば江渡貝はふにゃりと笑ってカップを両手に持っている。

「熱々です、気を付けて」

「ありがとうね」

カップを持ち、蓋をあける。

ここの飲み物は見た目も可愛らしい。

雪の結晶をイメージしているのだろうか。白いホイップクリームの上には小さなマシュマロに、銀色の丸い砂糖菓子のようなものが乗っていた。さらにジグザグにかけられたホワイトチョコが甘い懐かしい香りを漂わせている。

一口口に含めばホイップクリームの甘みが広がった。上にかかったチョコがとろりと口の中に痺れるような甘さを広げていく。

上のマシュマロは如何だろうか、と食んでみればバニラの香りが口の中で溶けた。銀色の砂糖菓子の中身はパフだったらしい。これもまた、甘い。

「上に乗ってる練乳美味しいですね」

「これはたぶん、ホワイトチョコじゃないかな」

「そっか、そうですね!」

うっかりマジレスを返してしまったなぁと思いながら鶴見は顔を上げる。今日もやはりヒゲにチョコレートが付いている。

「ヒゲ……今日は白いです」

ちらりと江渡貝は鶴見の方を横目で見る。

「そうだねぇ」

鶴見もちらりと横目で江渡貝の方をみた。窓ガラス越しに二人の視線が交わった。

「しょうがないですね」

そう言うと江渡貝はポケットからハンカチを取り出した。

おわり

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