くさい体(月島さんと江渡貝くん)

即興二次小説より(お題:くさい体 制限時間:15分)

「あークサイ!!」
江渡貝は眉間にしわを寄せて、クサイクサイと繰り返した。
不機嫌そうな口ぶりの江渡貝に対して月島は自分の腕のにおいを嗅いだ。
「あー、さっき風呂に入ったばかりなんだが……気になるのなら、前山と交代した後に相談する」
申し訳なさそうな月島に対して、江渡貝は瞬きする。それから、何故か不機嫌そうだった眉がふわりと和らいだ。
「あぁ、月島さん。いたんですか」
口調もやや上機嫌そうだ。
「いや、クサイのは月島さんじゃあないんです」
暇を持て余していたところに、ようやく話し相手を見つけた。そんな雰囲気がする。
「そうなのか……」
剥製の材料はナマモノである。それらを腐らせてしまったのだろうか。月島は怪訝そうに江渡貝を見た。
「今夜は炭鉱で事故があった」
江渡貝は頬を紅潮させ、やや興奮気味に話し始めた。
よく見れば江渡貝の服装はいつもよりも薄汚れている。ズボンには土や何かの断片が付いている。
考えたくはないが、おそらく墓の中から人の死体を掘り出してきたところだったのだろう。
『収穫』があると江渡貝はいつもよりも機嫌がいい。
剥製を作ることも好きだが、やはり趣味の(領域を超えている)洋服作りの材料が手に入るのは嬉しいのだろう。
「クサイのは月島さんじゃなくって、僕なんです。やっぱり死んだ人って少しにおいがあるじゃないですか」
江渡貝はそのまま言葉をつづける。
「甘いような酸っぱいような、それに土とか、僕だって汗かいちゃうし。あーあ、お風呂入りたいな」
江渡貝はそう言うと月島をみる。
「そうだなぁ、君一人でも構わないのだが、生き帰りの護衛は必要だから」
月島の返答にうんうんと江渡貝は頷く。
「じゃぁ決まりですね。前山さんが帰ってきたら今日は月島さんとお風呂に行きます」
「了解だ。俺は銭湯の外で待っているから……」
「月島さんって、お風呂好きでしょ? どうせ一緒に行くんですから一緒に入りましょ」
江渡貝はにこりと笑い、月島の肩をたたく。
月島はあぁ、と返事をした。
「お話したいこと沢山あるなぁ」
江渡貝のお話はたいてい鶴見のことか、人皮の話だ。
ややメンドクサイと思いながらも、月島は「そうか」と一言返し銭湯に行く準備を始めた。

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