死にかけの道のり

鶴見さんと江渡貝くん(世界軸不明)
お題:死にかけの道のり(15分)

「鶴見さん、もうダメかもしれないです」
江渡貝はへたりと両足の力を抜いて地面に座り込んだ。
「江渡貝くん、ダメじゃない。ここにいたらダメなんだ」
座り込む江渡貝を叱咤し鶴見は江渡貝の腕を引いた。
「だって僕は鶴見さんと違って、軍人さんじゃない。基礎的な体力もない…」
近場の木の元に江渡貝を座らせた。木にもたれかかるようにして、江渡貝はぎゅっと目を閉じた。
江渡貝の瞳から、一粒涙がこぼれる。
「どうして、こんなことに……」

近くの山が噴火し始め、江渡貝たちの住む村には火山灰が降り始め、そして、もうじき溶岩が近づこうとしていた。
溶岩が村に流れ込めば、家々は燃え、火災が起こる。もうすでに、裏山は火災となっている。
そのため、火山灰に加えて、一酸化炭素中毒で死ぬ可能性もある。
同居していた江渡貝と鶴見は、その様子にいち早く気付き、村中に伝言をした。
そして、身の回りの最低限のもの、水、食料を持ち、村から逃げ出した。
鶴見達の知らせを聞いた村の者もおおよそ逃げ始めているだろう。
逃げ遅れがなければいいのだが、と鶴見はオレンジ色の夜中の空を見上げて願う。

江渡貝と鶴見は村から、次のどこか休める村までの道を歩いていた。
しかし、整備のされていない場所もあり、獣道や行き止まりもあった。
早く逃げねば。
しかし食料もつき、水分もほとんど残っていない。
どうにか泥水を濾して飲んでみたものの、のどの渇きは取れることはない。

鶴見ももちろん江渡貝が自分より若くとも体力面、精神面での差を感じていた。
戦争の最前線で指揮をとっていた鶴見には、ここはまだマシだと思っている。
「鶴見さん、もう、僕はいいです」
「いいって……?」
「僕のことは置いて行ってください」
鶴見は江渡貝の言う意味が一瞬理解できなかった。
「それは、私だけ生きろ、ということかい。江渡貝くん」
江渡貝はそれを聞きうなづいた。
「いい加減にしてくれ」
鶴見は江渡貝に背を向けた。江渡貝はそれを満足そうに見つめる。
「鶴見さんだけでも、生きて」
口だけ動かして、江渡貝は鶴見を送ろうとした。
しかし鶴見は江渡貝に近づくと、江渡貝の体を持ち上げてそのまま背負う。
「私の背中で少し眠ればいい。なんだ、江渡貝くんは背のわりに軽いなぁ」
わはは、と笑う鶴見の背中で江渡貝は涙をこぼした。
近づく火山の災害からは遠ざかったはずだ。
新たな生きる道を目指した

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