江鶴江 永遠に麗しく、菫の花よ4(下書き)

「また誘ってくださいね」
そう連絡したのは10分ほど前のことであった。
返事はまだ来ていないよね。江渡貝は半分緊張しながらスマホの画面をのぞいた。
もう半分は、調子にのってこんな風に先生を振り回して本当は迷惑に思っているんじゃないかという不安が江渡貝の胸の中を苦しめていた。
緊張しながらスマホの画面を開けば、そこには「次はいつ会えそうかな?」という誘いの文字が並んでいる。
嬉しい、と江渡貝は胸にスマホを抱いた。それから、スンと冷静な表情に戻ると鶴見からのメッセージへの返信を打ち始める。
「いつもと同じ日曜日だったら大丈夫です。鶴見先生は?」
「私も同じだ。それじゃぁ、次の日曜日も表参道の辺りにしようか」
そして、鶴見からは「ここなんてどうかな」という言葉に続き、可愛らしいケーキのお店のURLが送られてきたのであった。
「すっごく可愛いです。行きましょう、行きましょう!」
江渡貝は下にシロクマのスタンプを押して鶴見に返事を送る。
「じゃあ時間は12時に、表参道A2出口で。また、日曜日楽しみだ」
鶴見からの言葉に江渡貝はにやりと顔を緩める。
それからもう一度、鶴見とのやりとりを読み直すと、甘いすぎるものを食べた時のように江渡貝は顔にぎゅっとしわを寄せた。

次の日曜日も江渡貝は朝から着替えの準備をしていた。
前日の夜のうちに巻いておいたウイッグを横目で見る。
自分のもとの髪色に合わせたブラウンのウイッグだ。
それから、江渡貝自身で作った、ショートケーキのような色合いのジャンパースカートをクローゼットから取り出した。裾のスイーツ模様はオリジナルプリントで作成したものだ。
淡いピンクのストライプがおかしのラッピングのようで華やかで可愛らしいスカートだ。
それから、ベーシックな組み合わせになるが、オフホワイトの丸襟のブラウスを合わせる。
このブラウスはシンプルに作れる簡単な型紙のもので作っている。
ブラウスに袖を通し、ボタンを留めていく。
ドレスを身にまとい、パニエを履いて、お気に入りの白いタイツを合わせた。
鏡に映る自分自身は、まだまだ少年の女装姿だ。
ドレッサーの前に座り、化粧品を取り出すと、江渡貝はベースメイクをすまし、アイメイクを施していく。控えめなつけまつげを付けて、紅を塗り、ウイッグをかぶる。
レースにピンクのリボンの装飾がされているヘッドドレスを最後に着けると、鏡の前にはロリィタを着た人間が座っていた。
幸いにも色素の薄い瞳はカラーコンタクトいらずだ。
鶴見先生は褒めてくれるだろうか。鶴見のことを考えるとどきりと音を立てる心臓を抑えながら江渡貝は悩まし気な顔をする。
江渡貝はふるふると頭を振り、きっ、と前を向いた。
それから、ロリィタ美少年はお気に入りのカバンを持つと、一人暮らしの自室を後にした。

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