1116 いい色の日の鶴江渡

いい色の日の鶴江渡

鶴見は江渡貝に貝殻を一つ差し出した。
「小物入れ、ですか?」
江渡貝はそれを受け取ると、鶴見に尋ねた。
鶴見はその質問を待っていましたとでもいうように、にやりと口角を上げる。
「開けてごらん」
鶴見に促されるままに貝殻を開いてみる。貝殻はおそらくハマグリだ。
貝殻を開けば、中には紅いものが塗り付けてあった。
「これは……」
「口紅だよ」
あっけに取られている江渡貝をよそに鶴見は話を続ける。
「君は女性の恰好もする。近代的な服装でとても美しい」
鶴見に褒められて江渡貝はぽっと顔を赤らめた。
「せっかくだから、唇に紅をさしたら似合うんじゃないかと思ってね」
鶴見は江渡貝の手元の紅を薬指に取ると、江渡貝の顎を掴み、紅を江渡貝の唇に塗った。
「ほら、似合う。好い色だ」

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