夕張4人組のごはん談義

「ごはんのおかず、ですか?」
江渡貝は訊きかえした。
「そうそう、江渡貝くんは何が好き?」
「僕は……」
僕は、と言い江渡貝は何やら考え込んでしまった。
ごはんのおかずか、と江渡貝は繰り返した。
洋食が多い家庭だった。父親と不仲ではあったが、江渡貝の母親は母親らしくしようといつも豪華な食事を作ってくれていたように感じる。
しかし、不穏な家庭環境故か、明るい食卓ではなかった。
江渡貝自身、情緒不安定なまま過ごしていたためだろうか。
もしくは無意識に家族の記憶を閉じ込めようとしているせいか、家庭的な記憶はどこか曖昧でうまく思い出すことができなかった。
薄暗い表情を浮かべる江渡貝の横にぬっとあらわれた鶴見は、江渡貝の肩に手を置いた。
「そうだ、私だったら、味噌で甘辛く味付けをした牛肉かなぁ。最近はやりの牛鍋も悪くない」
「うん、いいですね。俺は……海苔かな」
「月島らしいな。たしかえごねりも好きだったね。前山のおすすめは」
「僕はきんぴらごぼうですね」
「うーん、確かに、どれもおいしそうです」
そういえば、と江渡貝はつづけた。
「そろそろ食材がないから買いにいかないと。そうだ」
江渡貝は何か思いついたのだろう。頬を赤くして鶴見に耳打ちをする。
「いいんじゃない」
にこり、と笑うと鶴見は江渡貝の頭を撫でた。

かべうちより。

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