江渡貝くんの話 原作軸 怪談風味

「あの家には近づかない方が良い」
夕張に住む子供が言った。どうして、と訊ねれば彼処には一人しか人が住んでいないのに夜な夜な話し声がするから。と少年は答えた。
ここら辺の子供に限らず、あの年頃の子供は噂話や迷信じみた話が好きだ。
今日も子供達は煙突の煙の歌なんて唄って歩き回っている。炭鉱事故が起きて人が死ぬ、とかそんな内容だ。
さて、あの家。青白い三角屋根の家の正体。それはただの剥製製作を請け負う青年の住む家だ。それに彼には家族だっている。
なぜそんな事を知っているか?それは僕こそがその家に住む人間だからだ。
けれどもあの噂の歌が本当なら今夜も僕は忙しい。
ばたばたと僕の横を薄暗い煤まみれの人が慌てて通り過ぎて行った。そして炭鉱側から人の騒めきが聞こえる。
さて、今夜も炭鉱側の墓地に行って新鮮な人を持ち帰らなければならない。
また家族のような存在が増えるな、と僕は溜息をつく。死んだ人は無口だ。
明るい家族の存在を思い出し、僕は少し嬉しくなるのだった。

Share this...
Tweet about this on Twitter
Twitter
Print this page
Print