鶴江渡 真綿の中で 死ネタ

鶴江雪山死ネタ。苦手な方は閲覧ご遠慮願います。苦情はおやめください。酔っ払いの書いた怪文書です。そのうち消します……。

真綿の中で

真白な世界を眺めていた。すべて雪の中に埋もれてしまい、この辺りで聴こえるのは雪の降り積もる音だけだ。もぞ、と久しぶりに布擦れの音がした。「起きているかい」鶴見が口を開けばあたりに白い吐息が上がった。まだわずかに残されていた体温を携えた吐息だ。消えゆく生命の動きを表すように、湯気はふっと消えた。「起きて、ます」眠りに落ちる前のような微睡んだ声だ。江渡貝は静かに息を吐く。わずかに白い息があがった。夢に落ち行く子供のような目をしていた。「もう寒くすらないや」江渡貝は微かに笑った。鶴見も寝入りそうな声で「うん」と返す。皮膚の表面に氷の粒が張り付いている。江渡貝の睫毛は雪がつき白く固まっている。唇も色を失い、頬も青白い。「江渡貝くん」鶴見は言葉を続けた。「君は……若い。君だけでも」「ふふ……何言ってるんです」二人でここから出て生きよう、江渡貝はそう言えたらと願っているが、手足が不思議とポカポカ暖かい。鶴見と一緒にいられるのならずっとここにいても良いように思えた。「さいごに隣にいるのが鶴見さんでよかった」君は生きるべきだ、鶴見もそう言えたらと願っていたが、そうだね。と返した。「もしかしたら、君の方が長く起きているかもしれないね」「若いからですか?」「私よりも肉付きが良い」鶴見の体が少しだけ江渡貝の腕を押した。なにそれ、と江渡貝の声が笑う。「もしも、今度また、鶴見さんに会えるなら、暖かいところで逢いたいです」「たしかに、ここは寒すぎた」今はもう寒くない。鶴見は穏やかな目をしていた。「おかしいな、昔は生まれ変わたくなんてなかったのに。鶴見さんにまたあえるかもって思ったら……」「不思議だね」「また、逢えますか?」「……きっと君を見つけるさ」「僕も」「幸せになろう」鶴見は深く息を吐いた。「鶴見さん」さようなら。江渡貝も深く息を吐き、目を閉じた。真白の雪に包まれて二人は静かに眠る。

木漏れ日。
鳥の鳴く声。
朝の澄んだ空気が心地いい。
季節は春だ。
「こんにちは。こちらで剥製を扱っていると聞いてやってきたのですが。江渡貝弥作さん?」
「……ええ、そうです。あ……では、中へどうぞ!たくさんありますので」

おわり

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